実験手法解説

細胞の凍結保存とは【方法とポイントを解説】

・細胞の凍結保存ってなに?

・細胞の凍結保存にはなにが必要なの?

・実際にどうやって凍結保存をすればいいの?

・凍結保存した細胞の解凍方法がわからない

こんにちは。Hiro(@THiro70217938)といいます。

細胞培養歴9年で大学で助教をしています。

この記事では、培養細胞の凍結保存について解説していきます。

細胞の凍結保存とは

培養している細胞は凍結し、液体窒素中で保存することができます。

液体窒素中で保存すれば、半永久的に凍結前の状態を保ったまま細胞を維持することができます

ただし適切な方法で凍結保存を行わないと、細胞の生存率が著しく下がってしまうので、ポイントをしっかり抑えて凍結保存を行ってください。

培養細胞の凍結保存までの流れの概要図

凍結保存のメリット

継代維持をせずにすむ

凍結保存のメリットは、細胞を継代維持しなくてすむことです。

培養細胞を使った実験をしない間に、無駄に作業をしたり試薬を使う必要がなくなります。

実験の再開がスムーズになる

実験を失敗して細胞をダメにしてしまったとき」、「いったん中断していた培養実験を再開するとき」、「長期休暇明け」、に凍結保存していた細胞を解凍して使うことで実験をスムーズに始めることができます。

継代維持による細胞の性質の変化を防ぐことができる

培養細胞は継代維持をしている間に、性質が変化することがあります。

つまり細胞株は無限に増殖するとはいえ、長期間維持するともとの性質と異なる細胞に変化する可能性があるのです。

細胞の性質変化を防ぐために、実験を開始する前に細胞をいったん増やし、複数のチューブに分けて凍結保存を行います。すると継代をある程度重ねた細胞(20回くらい)を破棄して、凍結保存した新しい細胞を使うことができます。この工夫によって元の状態を保った細胞をつねに使うことができるのです。

凍結保存できる細胞

細胞の凍結保存は便利ですが、すべての細胞で凍結保存ができるわけではありません

細胞株(cell line)やがん細胞は凍結保存に強いので多くの場合は凍結保存が可能です。

一方で初代培養細胞や幹細胞は凍結保存に弱いため、事前に使っている細胞が凍結保存できるのかや適切な凍結方法を調べる必要があります。

凍結保存できる細胞とできない細胞一覧表

凍結保存できる期間

凍結した細胞は液体窒素中で保存することで半永久的に保存することができます

凍結保存していた細胞の生存率が低い場合は、凍結保存の方法が悪い場合が多いです。

-80℃のディープフリーザーでも細胞を保存することはできますが、1年程度が限界です。ディープフリーザー内での保存では、時間経過によって細胞の状態が悪くなり、最終的には再培養することができないと言われています。

ディープフリーザーと液体窒素中での細胞の保存可能期間について

凍結保存に必要なもの

凍結保存に必要不可欠な試薬と道具・機器について説明します。

試薬

DMSO(ジメチルスルホキシド)

DMSOは凍結保護剤として細胞凍結作業に使います。

DMSOを終濃度5~10%になるように培地に加えて、この培地に細胞を懸濁し凍結します。

DMSOなしでは凍結するときに大きな氷の結晶ができ、細胞を傷害するためにほとんどの細胞が死んでしまいます。DMSOは氷の結晶ができるときに水分を吸収することで、結晶のサイズを小さくします。ことため凍結による細胞死を防ぐことができます。

DMSOは培地に加えると発熱するため、DMSOを加えた培地を冷やしてから使うようにしてください。

また細胞凍結用に調整された培地も市販されているので、DMSOを添加する代わりに使うと調整の手間がはぶけてミスも減らせます。

細胞・組織凍結保存液セルバンカー(TaKaRa)

道具

凍結保存用チューブ

細胞懸濁液を入れて凍結保存をするときに使う専用のチューブです。

細胞の凍結保存専用のチューブが各メーカーで売られています。

一例: クライオチューブ(Thermo Fisher)

バイセル

細胞を凍結するときには、温度をゆっくり下げることが重要です。

そのため細胞懸濁液を入れたチューブを直接低温化で冷やしてはいけません。

温度を徐々にさげるためにバイセルという凍結処理容器がよく使われます。

バイセルにチューブを入れてディープフリーザーに3時間放置することで細胞の凍結が完了します。

バイセル(フナコシ)

「バイセルがない」という研究室では、綿にチューブを入れてディープフリーザーに放置することで、ゆっくり細胞を冷やすこともできます。

機器

ディープフリーザー

ディープフリーザーは細胞を凍結するために使います。

一般的に-80℃の超低温フリーザーのことをさします。

上で述べたように、-80℃でも細胞の保存はできますが長期の保存には向いていないので、凍結処理が終わったらなるべく早く液体窒素保存容器に細胞を移動させましょう。

液体窒素保存容器

タンク型の保存容器内に液体窒素を満たしたものです。この液体窒素保存容器に凍結した細胞を入れておくことで、半永久的に細胞を保存することができます。

液体窒素は徐々に揮発していくので、定期的に液体窒素を保存する必要があります。必ず定期的に液体窒素の残量を確認し補充を行ってください。

保存容器内の液体窒素がなくなると、研究室の細胞が全滅し取り返しのつかないことになってしまいます。

凍結保存のプロトコル

細胞の凍結保存法を以下に書いておきます。参考にしてみてください。

~細胞凍結保存のプロトコル(DMSOを使用)~

1.培地にDMSOを終濃度5~10%になるように添加し、氷冷しておく

2.細胞凍結用チューブに「細胞名」・「継代数」・「日付」・「実験者名」・「細胞数」など必要な情報を書いておく

3.バイセルを氷冷しておく

4.継代するときと同じように細胞を回収し、細胞懸濁液をつくり細胞数を数える

*継代方法は「付着細胞の継代方法について解説します」を参考にしてください。

*細胞数の計測は「血球計算盤を使った細胞数の数え方」を参考にしてください。

5.DMSO入りの培地に細胞を懸濁しなおす

*細胞密度は106~107 cells/mLが一般的です
6.作製した細胞懸濁液を保存用チューブに分注する

7.チューブをバイセルに入れ、-80℃ディープフリーザー内に3時間から1晩放置する

8.液体窒素保存容器にチューブを移して保存する

9.保存したチューブ1本を使用して、細胞を解凍し生存率を確認する 

凍結細胞解凍のプロトコル

凍結保存した細胞を再培養するための解凍のプロトコルを紹介します。

ちなみに凍結保存した細胞を解凍することを「細胞を起こす」といいます。

~凍結細胞解凍のプロトコル(細胞の起こし方)~

1.あらかじめ水浴の水を37℃にしておく

2.培地10 mLを遠心チューブに入れておく

3.液体窒素保存容器から目的の細胞が保存されているチューブを取り出す

4.細胞の入ったチューブの底を37℃の温水につけて素早く細胞を解凍する

*温水がチューブに混入しコンタミしないように注意すること

5.解凍した細胞懸濁液全量を2.で用意した置いた培地入りの遠心チューブに加える

*解凍後の細胞は弱っているためピペッティングは行わない

6.遠心後上清を取り除き、新しい培地を加える

7.ディッシュなど適切な培養容器に細胞を播種し培養を開始する

まとめ

以上細胞の凍結保存方法と注意点でした。

ポイントをもう一度まとめます。

・凍結保存することで細胞を半永久的に保存できる

・細胞株やがん細胞は凍結保存が容易にできる

・凍結保存時には凍結保護剤が必須である

・徐々に温度を下げて凍結させることが重要である

ぜひポイントを抑えて正しく細胞を凍結保存してくださいね。

さらに細胞培養について勉強したい人は細胞培養の基礎知識をまとめた記事

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