分子生物学実験

【コロニーPCRとは】原理・プロトコル・コツを解説【インサートチェック法】

コロニーPCRは、主に大腸菌のコロニーからプラスミドに挿入されたDNAの有無を直接判定する、迅速かつハイスループットなPCR法です。遺伝子クローニングは、DNA改変などのために使われる最もポピュラーな方法の一つあり、大腸菌へのトランスフォーメーション(形質転換)後に挿入されたDNAの有無を簡便に判定するためにコロニーPCRが有効な手段となります。

コロニーPCRは、インサート(挿入されたDNA)に特異的なプライマーを設計することで、目的とするDNAがプラスミドに挿入されているかどうかを識別することができる手法です。しかしコロニーPCRは単純なものではないので、この記事ではコロニーPCRを成功させるために必要な知識や考え方を解説します。特にこの記事では、コロニーPCRの原理、方法、メリットとデメリットを解説します。

PCRの原理がわからない、しっかり勉強したい人は「PCRの原理を図解付きでわかりやすく解説」を読んでください。

記事の内容は以下の通りです。

プラスミドDNAとは

プラスミドDNAとは大腸菌の染色体から独立して複製される円形のDNAで、遺伝子クローニング(遺伝子単離)に用いられます。

遺伝子クローニングは、古くから使われてきた伝統的な分子遺伝学的手法です。遺伝子クローニングでは、人為的な手段で目的の遺伝子をプラスミドに挿入します。このプラスミドDNAは大腸菌に導入することで、大腸菌の染色体から独立して複製されます。このため目的の遺伝子を無限に増幅することが可能となります。プラスミドDNAは、比較的短いDNA領域のクローニングに使用されます。大腸菌は他のどの生物よりも速く複製するので、興味のある遺伝子をプラスミドDNAに挿入することで、多くのコピーを生成することができます。

プラスミドDNAとは

遺伝子クローニングが成功しているを明らかにするために、目的の遺伝子がプラスミドDNAに挿入されているかどうかを判断することは非常に重要となります。

目的の遺伝子がプラスミドDNAに挿入されているかを判断するためには、以下の方法が確実ですが、多くの大腸菌コロニーの解析を行うためには時間と手間がかかります。

  1. 大腸菌へのプラスミドDNAのトランスフォーメーション(形質転換)
  2. 大腸菌コロニーの振とう培養
  3. ミニプレップ(大腸菌からのプラスミドDNA抽出)
  4. 制限酵素カット
  5. シークエンス解析

ここでコロニーPCR法を使用することで、目的の遺伝子が挿入されたプラスミドDNAを判別することができ、作業効率が格段に上がります。コロニーPCR法はプラスミドDNAのトランスフォーメーションと大腸菌コロニーの振とう培養の間に行います。

コロニーPCRとは

コロニーPCRは、従来のPCRを改変したもので、大腸菌のコロニーを直接PCRテンプレート(鋳型)として使用します。

コロニーPCRの流れを図示すると下図のようになります。

コロニーPCRの流れ

画像使用(ピペットマン・チューブ、サーマルサイクラー、電気泳動槽):統合TVより

コロニーPCRの流れがわかる動画もあるので紹介します。英語ですが映像を見るだけで流れがつかめるので、ぜひチェックしてください。

参考動画: How to perform colony PCR

コロニーPCRの原理

大腸菌コロニー中のプラスミドDNAは、PCR反応を用いて直接増幅することができます。具体的には、大腸菌コロニーを採取し、すべてのPCR試薬を含むマスターミックスに直接添加し、PCRに1回の加熱ステップを加えることで、プラスミドDNAが大腸菌から溶出され、PCR反応で増幅されます。これがコロニーPCRの基本原理ですが、必要に応じて変更することができます。

またインサート(挿入DNA)を増幅するために以下の2種類のプライマーを使用することができます。

  • インサート特異的プライマー
  • プラスミドベクター特異的プライマー

それぞれのプライマーの使い分けは、次の項目(コロニーPCRの方法)で詳しく説明します。

コロニーPCRの方法

コロニーPCRは従来のPCRの改良法であり、鋳型DNAの代わりに、大腸菌コロニーを直接PCR反応液中に添加します。鋳型となる大腸菌コロニー以外には通常のPCRと同様に、Taq DNAポリメラーゼ、プライマー、バッファー、dNTPsが使われます。

プライマーの設計・選択方法

コロニーPCRでは、プライマーの選択が非常に重要となり、以下のように調べたい項目によってどのようなプライマーを選択するかが変わります。

  • インサートの有無
  • インサートの大きさ
  • インサートの向き

インサートの有無

インサートの有無はインサート特異的プライマーを用いて調べます。
インサート特異的プライマーは、目的のインサート上特定の場所に結合するプライマーです。プラスミドDNA中に適切に挿入されているときのみインサート特異的プライマーによりDNAの増幅が起こるため、PCRによる増幅の有無により、インサートの有無(目的の遺伝子が挿入されているのか)を調べることができます。

インサート特異的プライマーによるコロニーPCR

インサートの大きさ

インサートの大きさはプラスミドベクター特異的プライマーを用いて調べます。
プラスミドベクター特異的プライマーは、インサートの外側の領域(インサートのフランキング領域)に結合します。そのためプラスミドベクター特異的プライマーを使うと、インサートの全長がPCRによって増幅されるので、インサートの大きさを決定することができます。

プラスミド特異的プライマーによるコロニーPCR

インサートの向き

インサートの向きはインサート特異的プライマーとプラスミドベクター特異的プライマーを組み合わせることにより調べることができます。

下図に示すようにインサートの向きが正しい時にはプライマーによってDNAの増幅が起きますが、インサートの向きが異なるときにはプライマーにより増幅が起きません。このように、インサート特異的プライマーとプラスミドベクター特異的プライマーを組み合わせると、DNA増幅の有無によってインサートの向きを判別することが可能となります。

コロニーPCRによるインサートの向きの判定

コロニーPCRのプロトコル

コロニーPCRでは大腸菌コロニーをそのまま利用でき、プラスミドDNAを大腸菌から抽出する必要はありません。DNA抽出作業が必要ないのは、大腸菌の細胞膜が壊れやすいからです。このため大腸菌を加熱することで簡単にDNAを溶出することができます。加熱のステップはPCR反応に含まれているため、追加の作業をすることなくコロニーPCRを行うことができるのです。

今回はQuick Taq HS DyeMixを使用した、コロニーPCRのプロトコルを紹介します。

PCR反応液の調製

試薬 使用量 最終濃度
滅菌水 9.2 µL
2x Quick Taq HS DyeMix 10 µL 1x
10 µM Primer#1 0.4 µL 0.2 µM
10 µM Primer#2 0.4 µL 0.2 µM
大腸菌コロニー 3回ピペッティング
合計 20 µL

PCRサイクル条件

  1. 94℃, 2 min
  2. 94℃, 30 sec
  3. (Tm-5)℃, 30 sec
  4. 68℃, 1 min/kb
  5. 2~4を25~35サイクル繰り返す

コロニーPCRを成功させるためのコツ

コロニーPCRは簡便に大腸菌コロニーからプラスミドに挿入されたDNAの有無を判定する手法ですが、適切な実験を行わないと誤った解釈によって勘違いをする恐れがあります。

ここではコロニーPCRを成功させるコツを解説してきます。

  • コロニー量を少なくする
  • ポジティブコントロールとネガティブコントロールを用いる

コロニー量を少なくする

テンプレート(鋳型)とする大腸菌コロニーの量を多くすることで、非特異的なPCR反応が起きる可能性が高くなってしまいます。そのためテンプレートとして少量の大腸菌コロニーの利用が適しています。大腸菌コロニーを採取し、振とう培養用のチューブに3回ピペッティングしマスタープレートを作製したのちに、PCR反応液中で3回ピペッティングする程度で十分です。

ポジティブコントロールとネガティブコントロールを用いる

ポジティブコントロールとして、プラスミドベクター特異的なプライマーを使用します。プラスミドベクター特異的なプライマーを使用することで、インサート(目的の遺伝子)が挿入されていなくても、PCR 反応によりプラスミドDNAのDNAバンドが得られます。この結果より、PCR反応液やコロニーが採取されていることを確認することができます。

ネガティブコントロールとしては、目的遺伝子を挿入していない元のプラスミド(インサートを持たないプラスミドDNA)を使用します。これによってインサートが挿入されていない場合のPCR産物を見極めることができ、偽陽性を勘違いする可能性を低くすることができます。

コロニーPCRのメリットとデメリット

以下にコロニーPCRのメリットとデメリットを列挙します。実験を行う際の参考にしてください。

コロニーPCRのメリット

コロニーPCRのメリットは以下の通りです。

  • 要する時間が短い(2~3時間程度)
  • コストパフォーマンスが良い
  • 精度と特異性が高い
  • セットアップが簡単にでき実験を行いやすい
  • プラスミドDNAの抽出や精製を行う必要がない
  • 制限酵素を用いる必要がない

コロニーPCRのデメリット

コロニーPCRのデメリットは以下の通りです。

  • 挿入DNAの配列情報を得ることができない
  • 挿入DNAの変異の検出ができない
  • 偽陽性を生じる可能性が高い

このため配列情報を得るためには、コロニーPCRで選別した大腸菌コロニーからプラスミドDNAを抽出・精製し、シークエンス解析を行う必要があります。

おわりに

プラスミドDNAに目的遺伝子が挿入されているかを調べるのに、コロニーPCR法は非常に有益な手法です。一方でコロニーPCR法だけでは正しい結果を解釈するには不十分です。コロニーPCR法ではインサートの配列が得られないため、変異が挿入部に存在する可能性が残ります。このためコロニーPCRはあくまでも、ミニプレップによるプラスミドDNAの抽出、精製を行う大腸菌コロニーの選別に用いるのがおすすめです。

PCRについて詳しく知りたい人は「PCRの原理を図解付きでわかりやすく解説」を参考にしてください。

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