生物学

ハーシーとチェイスの実験をイラスト付きでわかりやすく解説【高校生物基礎復習】

ハーシーとチェイスの実験とはT2ファージを利用した実験で、この実験により遺伝子がDNAであることが明らかになりました。

実験者のうちハーシーはこの功績が認められてノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

グリフィスの実験エイブリーの実験と並び、「遺伝子の本体がDNA」であることの証明に欠かせない研究です。

この実験は、T2ファージの性質に注目して行われました。

T2ファージは大腸菌に物質を注入することで、大腸菌に子ファージを合成させます。つまり注入された物質は遺伝子であることがわかります。この事実からT2ファージが注入する物質を明らかにすれば遺伝子の正体がわかるとハーシーとチェイスは考えました。

実験の結果T2ファージはDNAを注入することがわかり、このことから遺伝子の本体がDNAであることが明らかになりました。

ハーシーとチェイスの実験はグリフィスの実験やエイブリーの実験と比べても難しいため、この記事ではしっかりとイラストを使いながらわかりやすく実験方法や結果について解説をしていきます。

事前にグリフィスの実験とエイブリーの実験を勉強したい人は以下の記事を参考にしてください。

ハーシーとチェイスとは

ハーシーとチェイスの実験はその名の通り、アルフレッド・ハーシーマーサ・チェイスの2人によって行われた実験です。

写真はWikipediaより

 

 

 

アルフレッド・ハーシー

アルフレッド・ハーシーはアメリカの遺伝学と微生物学の研究者です。1908年に生まれ1997年に亡くなりました。

コールド・スプリング・ハーバー研究所でハーシーとチェイスの実験を行い、この成果が認められ、1969年に「ウイルスの複製機構と遺伝的構造に関する発見」でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

原著論文:

Hershey, A.D.; Chase, M. (1952)
Independent functions of viral protein and nucleic acid in growth of bacteriophage
The Journal of General Physiology 36, 39-56

マーサ・チェイス

マーサ・チェイスもアメリカの遺伝学の研究者です。1927年に生まれ2003年に亡くなりました。

コールド・スプリング・ハーバー研究所で助手として働き、ハーシーと共にDNAが遺伝子の本体であることを証明しました。

T2ファージとは

T2ファージは大腸菌に寄生するバクテリオファージの1種です。バクテリオファージとは細菌に寄生するウイルスです。

T2ファージは頭部尾部からなる特徴的な形状をしています。頭部にはタンパク質とDNAがほぼ50%ずつ含まれていて、尾部はタンパク質で出来ています。

T2ファージの構造

T2ファージは以下のように大腸菌に寄生して、子ファージを作らせます。

  1. T2ファージが大腸菌に付着し、T2ファージが持つ物質の一部を大腸菌内に注入する
  2. T2ファージが注入した物質を基として、大腸菌内で子ファージが合成される
  3. 注入20分後には大腸菌の細胞壁が溶けて大腸菌内から多数の子ファージが出てくる

*ハーシーとチェイスの実験によってT2ファージが注入する物質がDNAであることがわかりました。

T2ファージの大腸菌への感染と子ファージの増殖

実験目的

上で説明したように、T2ファージが大腸菌内に注入した物質は、子ファージを作らせることができます。つまり「T2ファージが注入した物質=遺伝子」であると考えることができます。

このことからハーシーとチェイスは、T2ファージが大腸菌に注入する物質がタンパク質とDNAのどちらであるかを突き止めることで、遺伝子の本体を明らかにすることができると思い、実験を行いました。

実験の目的

T2ファージが大腸菌内に注入する物質の解明(DNAとタンパク質どちらであるのか知りたい!)

実験方法と結果

それではハーシーとチェイスの実験の方法と結果を解説していきます。

方法

先ずは簡単に実験方法の概略を説明します。

ハーシーとチェイスはT2ファージを大腸菌に付着させ、T2ファージが物質を注入した後の大腸菌を集め、大腸菌内にT2ファージのDNAとタンパク質、どちらが含まれているかを調べました。

DNAとタンパク質を直接観察するのは難しいので、ハーシーとチェイスはDNAとタンパク質にそれぞれ目印を付けて、目印を検出する(見る)ことでDNAとタンパク質のどちらが含まれているかを調べました。

T2ファージのDNAとタンパク質への標識

次に詳細な実験方法を記します。

  1. T2ファージのタンパク質とDNAにそれぞれ別の目印(標識)をつける
  2. 培養液中で目印をつけたT2ファージを大腸菌に付着させ、T2ファージの持つ物質を大腸菌内に注入させる(2~3分間)
  3. T2ファージを付着させた2~3分後に、培養液を撹拌する(かき混ぜる)ことにより、大腸菌に付着したT2ファージを大腸菌からはがす
  4. 遠心分離を行うことで、大腸菌からはがれたT2ファージの殻とT2ファージの物質が注入された大腸菌を分離する*大腸菌とT2ファージの殻を比べると大腸菌の方が重たいので、培養液を遠心することにより、大腸菌は沈んで沈殿となり、T2ファージの殻は浮き培養液の上澄み液に存在するようになります。
    つまり遠心分離後の沈殿を使用することで大腸菌のみを調べることができます。
  5. 分離によって得られた大腸菌を調べて、目印の情報からタンパク質とDNAのどちらが存在するかを調べる。
ハーシーとチェイスの実験の実験方法

結果

上記の実験を行った結果、分離によって得られた大腸菌からは目印の付いたDNAが検出されました(見つかりました)が目印の付いたタンパク質は検出されませんでした。

一方で、分離によって得られたファージの殻からは目印のついたタンパク質が検出されました。

この実験結果からT2ファージが大腸菌に注入した物質がDNAであることがわかりました。

つまり遺伝子の本体がDNAであることが証明されたのです。

結果のまとめ
  1. 分離によって得られた大腸菌からは目印の付いたDNAが検出された
  2. 分離によって得られたファージの殻からは目印のついたタンパク質が検出された
結論
  • T2ファージが大腸菌に注入した物質はDNAである
  • 遺伝子の本体はDNAである

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T2ファージの感染と増殖(子ファージ産生)のしくみ

ハーシーとチェイスの実験や、その他の研究者の実験によってT2ファージがどのように大腸菌に感染して子ファージが作られるかが明らかになりました。

これまでの説明が難しかったという人は、T2ファージの感染の仕組みを勉強したうえで復習してみてください。

T2ファージの感染の仕組み

  1. ファージが大腸菌に付着する
  2. ファージの殻に含まれるDNAが大腸菌に注入される
  3. ファージの殻は大腸菌に付着したまま残り、注入されたDNAは大腸菌内で増える
  4. 注入されたファージのDNAを基に大腸菌が子ファージ(子ファージのタンパク質部分)を合成し、合成された殻にDNAが包まれる
  5. 大腸菌の細胞壁が壊れて、合成された大量の子ファージが大腸菌外に放出される
T2ファージの感染と増殖の仕組み

タンパク質とDNAに目印(標識)をつける方法【応用】

ここでは応用的な考えになりますが、T2ファージのタンパク質とDNAにどのような目印を付けるのか、またどうやって目印を付けるのかについて説明します。

放射性同位体について

タンパク質とDNAに目印を付けるために、ハーシーとチェイスは放射性同位体を用いました。

放射性同位体とは、同じ元素でも中性子数が異なり放射線を発する原子のことで、放射線を発する以外は他の同位体と同じように働きます。

例としては放射性水素のトリチウム(3H)や炭素(14C)が知られています。

今回のハーシーとチェイスの実験では放射性のリン(32P)と硫黄(35S)が使われました。

理由としては、DNAはリンを含むが硫黄を含まず、逆にタンパク質は硫黄を含むがリンを含まないからです。簡単にまとめるとリンと硫黄どちらを含むかでDNAとタンパク質を区別することができます。

リン(P)硫黄(S)
DNA○(含む)×(含まない)
タンパク質×(含まない)○(含む)

つまり放射性のリン(32P)を使うことでDNAを、放射性の硫黄(35S)を使うことでタンパク質に目印をつけることができるのです。

実際には片方ずつに目印をつけて、放射線を検出することでDNAとタンパク質を検出しています。

放射性同位体を取り込ませる方法

それではどうやってファージのDNAとタンパク質に放射性同位体のリンと硫黄の目印を付けるのでしょうか。

ファージのDNAとタンパク質はT2ファージが感染した大腸菌によって作られます。また大腸菌は栄養の含まれる培養液(培地)から取り込んだ材料(物質)を基にしてDNAやタンパク質を合成します

従って、放射性同位体のリンと硫黄を入れた培養液で大腸菌を飼えば、大腸菌は放射性同位体を含んだDNAとタンパク質を合成することになります。

つまりこれを利用することで、大腸菌が合成した子ファージも放射性同位体を持つことになり、放射性同位体でDNAとタンパク質に目印を付けたファージを使うことができるのです。

ファージに関する雑学(解説動画)

以下のYouTubeの動画でファージに関する解説動画を見ることができます。

興味がある人はぜひご視聴ください。

ゆっくり解説ですので、苦手な方はご注意ください。

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