分子生物学実験

【PCRに失敗しないために】プライマー設計の12個のルールを解説

PCRを成功させるためには「正しいプライマー設計」が必要不可欠です。

また実験に慣れていない学生の多くは「プライマーってどうやって設計するの?」、「注意点がいっぱいあってよくわからない」と思っているのではないでしょうか。

この記事ではプライマー設計の初心者向けに、プライマー設計をするうえで知っておいた方がよい基本的なルールをわかりやすく解説します。

この記事を読むとプライマー設計のポイントである

  • 適切なプライマーの長さ
  • Tm値とはなにか、Tm値の設定方法
  • プライマー3’末端の設計
  • プライマーダイマー
  • プライマー設計ツール

を知ることができます。

ぜひこの記事を読んで適切なプライマーを設計し、PCR実験でデータを増やしていってください。

とりあえずプライマー設計ツールを使ってプライマーをすぐに作製したいという人は「Primer-BLASTの超基本的な使い方を解説【豊富な画像付き】」を参考にプライマー設計を行ってください。

プライマー設計の基本ルール12選

ここではプライマーを設計するために知っておきたい基本的なルールをまとめています。

以下のルールを守ってプライマーを設計すれば、標準的なPCRの成功率はグッと上昇します。

それぞれのルールの詳細についても、この記事で解説しているのでぜひ参考にしてください。

プライマー設計の基本ルール

  • プライマーの長さを18~25ヌクレオチドにする
  • Tm値を55~65℃にする
  • フォワードとリバースのプライマーのTm値の差を5℃以内にする
  • プライマーの3’末端がCまたはGで終わるようにする
  • プライマーの3’末端の最後の5塩基では、少なくとも2つのGまたはC塩基を含むようにする
  • GC含量を40〜60%にする
  • プライマー内で相補配列を持たないようにする
  • プライマー間で相補配列を持たないようにする
  • 4つ以上の同一ヌクレオチドの連続(CCCC)を避けるようにする
  • ジヌクレオチドの繰り返し(ATATATATAT)を含まないようにする
  • 増幅産物長をqPCRの時には100 bp、標準的なPCRの時には500 bp程度にする
  • プライマーが目的の遺伝子とは異なる遺伝子に結合しないようにする

基本ルールの詳細説明

ここからは上記のプライマー設計の基本ルールの詳細を解説していきます。

どの項目もプライマーを設計する上で必ず知っておきたい内容なので、しっかり勉強してくださいね。

プライマーの長さを18~25ヌクレオチドにする

プライマーを適切な長さにすることは、特異性を得るためやアニーリング時にテンプレートDNAに結合しやすくするために重要です。

単純に考えるとヌクレオチドにはATGCの4種類が存在するので、18ヌクレオチドのプライマーを作製すると4の18乗通り、つまり約700億通りのプライマーを設計することができます。

18ヌクレオチドと聞くと少ないと感じるかもしれませんが、実際に計算してみると特異性を持たせるには十分な長さであることがわかると思います。

Tm値を適切に設定する

Tm値とは融解温度(Melting Temperature)であり、Tm値を適切な値にすることはプライマーを設計するうえで、非常に重要なポイントとなります。

先ずは以下の2つをポイントをおさえてください。

  • Tm値を55~65℃にする
  • フォワードとリバースのプライマーのTm値の差を5℃以内にする

Tm値とは

Tm値とは融解温度(Melting Temperature)であり、二本鎖DNAの50%(半分)が解離して一本鎖DNAになる温度を表します。

二本鎖DNAは熱を加えることで熱変性し一本鎖に解離することから、Tm値より温度が高いと二本鎖DNAは50%以下となり、Tm値より温度が低いと二本鎖DNAは50%以上となります。

つまりTm値が60℃のプライマーを作製したとすると、テンプレートDNAとプライマーを混ぜて60℃にしたときには50%のプライマーがテンプレートDNAと結合し、60℃より温度を下げるとより多くのプライマーがDNAと結合し、逆に60℃より温度を上げるとより少ないプライマーがDNAと結合します。

Tm値を55~65℃にする

一般的にはプライマーのTm値は55~65℃がよいと言われています。

Tm値が高い場合には、プライマーとDNAの結合が不十分となりPCR効率が低くなります。

またTm値が低い場合には、プライマーが目的以外のDNAと結合し非特異的なPCR産物が増幅されてしまいます。

フォワードとリバースのプライマーのTm値の差を5℃以内にする

フォワードとリバースのプライマーのTm値が大きく異なると、適切なアニーリング温度を設定できなくなります。一般的にはフォワードとリバースのプライマーのTm値の差が5℃以内となるようにプライマーを設計します。

これはPCRの工程をイメージしてもらえばわかりやすいと思いますが、PCRのアニーリングの工程では一つの温度を決めてプライマーのアニーリングを行います。

そのためフォワードとリバース2つのプライマーのTm値が極端に異なると、両方のプライマーに適するアニーリング温度を決めるのが困難になってしまいます。

Tm値に影響を与える要因

それでは適切なTm値を持ったプライマーを設計するためには、プライマーをどのように変化させればTm値を変えることができるのでしょうか。

Tm値に影響を与える要因にはGC含量プライマー長の2つがあります。

二本鎖DNAは塩基間の水素結合により安定化されていて、塩基対はG-CとA-Tの組み合わせで形成されています。

塩基対によって水素結合の数が異なり、G-C塩基対では水素結合が3つA-T塩基対では水素結合が2つ作られます。

このためより多くの水素結合を持つG-Cの塩基対の方が塩基対の結合が強くなります。

塩基対の結合が強い方が、二本鎖が安定化するので、G-Cを多く持つプライマー(配列)の方が、二本鎖が解離しづらく、Tm値が高くなります。

またプライマーの長さが長い方が、結合が安定するためTm値が高くなります。

Tm値の計算方法

Tm値を算出する計算方法には、Wallace法、GC%法、最近接塩基対法の3つが主に知られています。

この中では最近接塩基対法がもっとも正確にTm値を計算できる方法です。

Wallace法、GC%法は簡単な計算式でできているので、興味がある人は以下の式を使ってTm値を計算してみてください。

  • Tm値=2×(AとTの個数)+4×(GとCの個数) 【Wallace法】
  • Tm値=59.9+0.41(GCの割合(%))―500/(プライマーの長さ)【GC%法】

また様々な企業がTm値計算用のExcelシートを用意してくれているので、実際の計算にはこちらを利用してみてください。

ここでは日本板硝子のTm値計算用のExcelシートへのリンクを貼っておきます。ページ下部のダウンロードボタンからExcelシートをダウンロードできます。

設計したプライマーの配列とPCR時のプライマーの濃度を記入すると、Wallace法、GC%法、最近接塩基対法の3つの計算結果が表示されます。

プライマー3’末端の設計

PCR効率を高めるためにはプライマーの3’末端の配列が重要です。

DNAを伸長させるポリメラーゼはプライマーの3’末端を足場に伸長反応を開始するため、プライマーの3’末端がテンプレートDNAと強く結合することが伸長反応の開始に重要となります。

以下の2つがプライマー3’末端の設計に重要となります。

  • プライマーの3’末端がCまたはGで終わるようにする。
  • プライマーの3’末端の最後の5塩基では、2~3つのGまたはCを含むようにする。

Tm値の説明に書いたようにG-C塩基対はA-T塩基対より結合が強いため、プライマーの3’末端がCまたはGで終わるようにすることで、プライマーの3’末端がテンプレートDNAと強く結合するようになります。

さらにプライマーの3’末端の最後の5塩基では、2~3つのGまたはCを含むようにすることで、プライマーの3’末端の結合がより強くなります。

逆にこれ以上GとCを3’末端に含ませると、プライマー同士が結合してできるプライマーダイマーの形成のリスクが増加するので注意してください。
*プライマーダイマーに関しては次の項目で説明しています。

プライマーの二次構造やプライマーダイマー形成を防ぐ

適切に設計されたプライマーは直鎖状の構造を取りますが、プライマー設計を失敗するとプライマーが二次構造やプライマーダイマーを形成してしまいPCR効率が著しく減少してしまいます。

プライマーが二次構造やプライマーダイマーを形成しないようにするためには、以下のポイントをおさえてください。

  • GC含量を40〜60%にする
  • プライマー内で相補配列を持たないようにする
  • プライマー間で相補配列を持たないようにする

G-C塩基対は結合が強いため、GC含量が多くなりすぎることで、プライマーが二次構造を形成することがあります。

さらに以下の図のようにプライマー内相互作用が起きると二次構造が形成され、プライマー間で相互作用が起きるとプライマーダイマー(二量体)が形成されます。

プライマー内とプライマー間の相互作用イメージ図

二次構造やプライマーダイマーが形成されると、プライマーが目的のDNAに結合せずPCR反応が開始しないために、著しくPCR効率が低下することになります。

このためGC含量を40〜60%にする、プライマー内やプライマー間で相補配列を持たないようにする必要があります。

ヌクレオチドの連続や繰り返しを含まない

CCCCのような4つ以上の同一ヌクレオチドの連続やATATATATのようなジヌクレオチドの繰り返しがプライマー内に存在するとミスプライミングの原因となってしまいます。

ミスプライミングとはプライマーが本来意図しているDNA領域とは異なる領域に結合してしまうことです。

同一ヌクレオチドの連続やジヌクレオチドの繰り返しが存在することで、似たような塩基配列を持つDNA領域にプライマーが結合してしまうので、これらの配列を含まないプライマーを設計しなおしましょう。

  • 4つ以上の同一ヌクレオチドの連続(CCCC)を避けるようにする
  • ジヌクレオチドの繰り返し(ATATATATAT)を含まないようにする

増幅産物を適切な長さにする

PCRによって合成される増幅産物の長さもPCRの成功を決定する大事な要因となります。

基本的には増幅産物の長さが短い方がPCRの効率は高くなります

そのため増幅産物の長さがqPCRの時には100 bp標準的なPCRの時には500 bp程度になるようにプライマーを設計しましょう。

増幅産物の長さ

  • qPCR:100 bp
  • 標準的なPCR:500 bp

プライマーが目的の遺伝子とは異なる遺伝子に結合しないようにする

PCRでは目的の遺伝子にプライマーを結合させることで、実験者の興味のある特定の遺伝子だけを増幅することができます。

そのため当然ですが、目的以外の遺伝子には結合しないプライマーの作製が必要不可欠となります。

遺伝子の中にはファミリーを作り配列が非常に似ている遺伝子が存在する場合もあります。

そこで設計したプライマーが他のDNA領域に結合しないかをPrimer-BLASTなどで確認するようにしてください。

プライマー設計ツール

ここまでプライマー設計の基本ルールを紹介してきました。

しかし実際に今回説明した全ての条件を満たしたプライマーを設計するのは、初心者にとってはかなり難しいです。

そこで簡単にクオリティーの高いプライマーを設計することができるおすすめのツールPrimer-BLASTを紹介します。

このツールを使うことで初心者でも比較的簡単にプランナーを設計することができます。

私もリアルタイムPCR用のプライマーはすべてこのサイトで設計していますが、ほとんどのプライマーが問題なく使用できています。

詳しい使い方は「Primer-BLASTの超基本的な使い方を解説【豊富な画像付き】」で解説をしています。

この記事を参考にして、ぜひPrimer-BLASTを使ってみてください。

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おわりに・関連記事

今回の記事ではプライマーを設計するうえで必ず知っておいてほしい基礎知識について解説しました。

この記事の内容を理解しておくことで、PCRが上手くいかないときにも解決策を思いついてトラブルシューティングが早くできるかもしれません。

これからの実験をスムーズに進めるうえでぜひしっかり勉強しておいてください。

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