実験原理解説

【図解付き】初心者向けにPCRの原理をわかりやすく解説します

こんにちは!

今回はPCRの原理を図解付きで初心者向けに解説します。

・PCRをこれから始めるひと

・PCRをしているけど原理は勉強できていないひと

・研究配属前の研究に興味があるひと

におすすめの内容です。

まずは勉強のとっかかりとして、ぜひこの記事を活用してください。

PCR法とは

まずは、PCR法とはなにかを説明します。

PCRとは「Polymerase Chain Reaction」の略で日本語では「ポリメラーゼ連鎖反応」といいます。

ポリメラーゼとは核酸(DNA・RNA)を鋳型にして新しい核酸をつくる酵素です。

PCR法では、ポリメラーゼを利用して特定の遺伝子だけを増幅させることができます。

どれくらい増えるかというと、だいたい「1,000,000,000,000倍」

そうなんと「一兆倍」にも増幅することができます。

PCR法により特定の遺伝子を増やすことができる

使用用途

PCR法を使うと「特定の遺伝子を増やす」ことができます。

特定の遺伝子を増やすと、どんないいことがあるのでしょうか?

特定の遺伝子を増やすことで、以下のことが可能になります。
・興味のある遺伝子を集める
・特定の遺伝子を持っているかを判別する
・遺伝子の量を調べる
・遺伝子の配列を決定する

PCR法を使うことでできること

興味のある遺伝子を集める

PCR法によって特定の遺伝子を増幅させることで

数ある遺伝子のなかから興味のある遺伝子だけを増やして、

増やした遺伝子を集めることができます。

この手法を「クローニング」といいます。

クローニングした遺伝子を使って目的の実験を行います。

PCR法によりクローニング用の遺伝子を増幅する

特定の遺伝子を持っているかを判別する

PCRによって特定の遺伝子だけを増やせるので、増えたかどうかを調べることで

そもそも「特定の遺伝子を持っているか」がわかります。

身近な例だと、コロナウイルスの遺伝子を持っているかを調べることでコロナウイルスに感染しているのかを調べることができます。

研究室の例をあげると、組換え遺伝子を持っているかを調べることで遺伝子改変マウスであるかを判別することができます。この手法は「ジェノタイピング」と呼ばれます。

このように、PCR法をウイルス検査やジェノタイピングに使うことができます。

PCR法により特定の遺伝子を持っているかを調べることができる

遺伝子の量・配列を調べる

PCR法で遺伝子を増やすときに、プラスαで操作を行うと

遺伝子の量や配列を調べることができます。

少し複雑になるので、別の記事で解説します。

必要なもの

それでは、実際にPCR法を行うためには何が必要になるのでしょうか?

PCR法に必要なものはこちらになります。
・ポリメラーゼ
・鋳型DNA
・プライマー
・ヌクレオチド
・PCR機(サーマルサイクラー)

ポリメラーゼ

ポリメラーゼとは核酸(DNA・RNA)を鋳型にして新しい核酸をつくる酵素です。

PCR法でDNAを増やす役目をもっているのは、ポリメラーゼになります。

PCR法では「耐熱菌がもつ特殊なポリメラーゼ」を使用します。

耐熱菌とは「高温でも生きることができる菌」のことです。

私たちの体にもポリメラーゼは存在します。

しかし、PCR法では「高温で反応させる」必要があります。

高温では私たちのもつポリメラーゼは失活してしまうので、PCR法に使うことが出来ません。

そこで耐熱菌のもつポリメラーゼを使います。

一番よくつかわれるのがTaqポリメラーゼです。

Taqポリメラーゼは「Thermus aquaticus」という耐熱菌が持つポリメラーゼです。

Taqポリメラーゼは高温でも比較的安定であるので、PCR法に適するポリメラーゼとして使われています。

好熱菌ポリメラーゼ連がPCRに適する理由

鋳型DNA

鋳型とは目的のものをつくる型のことです。

ポリメラーゼはなにもないところからDNAを作ることはできません。

ポリメラーゼは「鋳型DNAをもとにして対応する相補的なDNAをつくります」。

鋳型DNAは増やしたい遺伝子を持っている動物の細胞から得ることができます。

つまり、人の遺伝子を増やしたい場合は人の細胞から、マウスの遺伝子を増やしたい場合はマウスの細胞から鋳型DNAを調達することになります。

PCRには組織から取り出した鋳型DNAを使う

プライマー

プライマー(primer)はポリメラーゼがDNAを合成する開始点の役目をもっています。

ポリメラーゼは「鋳型DNA」と「DNA合成の開始の目印であるプライマー」がそろって初めてDNA合成を開始することができます。

PCR法ではプライマーとしてDNAプライマーを使います。

DNAプライマーには、「増やしたい遺伝子と相補的な配列を持つDNA」を用います。

つまり

DNAプライマーの配列によってどの遺伝子が増幅されるのかが決まる

のです。

プライマーがPCRによるDNA合成に必要である 相補的なDNA配列をプライマーとして用いる

ヌクレオチド

ヌクレオチドはDNAの構成成分です。

具体的には以下の4種になります。
・dATP(デオキシアデノシン三リン酸)
・dTTP(デオキシチミジン三リン酸)
・dCTP(デオキシシチジン三リン酸)
・dGTP(デオキシグアノシン三リン酸)

ポリメラーゼがDNAを合成するためには材料が必要となるため、材料としてヌクレオチドが必要になります。

デオキシヌクレオチドの種類と構造

PCR機(サーマルサイクラー)

最後にPCR法を行うための機械が必要になります。

サーマルサイクラーと呼ばれる機械です。

詳しくは次の項目で説明をしますが、PCR法を行うには「90℃→60℃→72℃」のような「加熱と冷却」が必要になります。

サーマルサイクラーは設定した温度変化プログラムに合わせて、温度制御をしてくれる機械になります。

画像はTaKaRa HPより引用

遺伝子が増幅される流れ

PCR法によってどのように特定の遺伝子が増幅されるのでしょうか?

PCR法は
1. 解離(Denature)
2. アニーリング(Annealing)
3. 伸長(Extension)
3ステップで構成されています。

解離(Denature)

Denatureは「DNAを2本鎖の状態から1本鎖にする」ステップです。

DNAは加熱することにより「可逆的に」変性させ2本鎖を解離させることができます。

具体的には約90℃で加熱することによりDNAを1本鎖にしていきます。

アニーリング(Annealing)

Annealingは1本鎖の鋳型DNAにプライマーを結合させるステップです。

適切な温度に調節することで「プライマーが目的のDNA領域に特異的に結合します」。

Annealingのステップが増幅される「DNAの特異性を決める」うえで最も大事になります。

Annealingはおおよそ60℃付近で行われます。

伸長(Extension)

ExtensionはポリメラーゼがDNAを合成するステップです。

プライマーが結合している場所を開始点として、鋳型DNAに相補的なDNAをポリメラーゼが合成します。

耐熱菌に由来する「Taqポリメラーゼは72℃で効率よく活性を発揮する」ため

72℃で反応をさせます。

まとめ

1. 90℃でDNAを1本鎖にし
2. 60℃でプライマーを結合させ
3. 72℃でポリメラーゼがDNAを合成する
ことで目的の遺伝子が増幅されます。

1~3を1サイクルとして、だいたい30~40サイクル反応させていきます。

1サイクルで目的の遺伝子が2倍になるので理論上

30サイクルだと 2の30乗≒10億倍
40サイクルだと 2の40乗≒1兆倍

に遺伝子が増幅されます。

注意点としては以下の図に示すように、1サイクル目では目的の領域のDNAは作られず2サイクル目で初めて目的の遺伝子が得られることになります。

PCRによって目的遺伝子が増幅されるまでの流れ

初心者用おすすめ書籍

いかがでしたでしょうか?

勉強になったと思ってもらえると嬉しいです。

最後に「もう少し勉強したい!」と思っている人向けに初心者向けの書籍を紹介します。

バイオ実験イラストレイテッド3は

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これを機に原理をしっかり勉強して、幅広い研究に応用できる知識を身につけましょう。