実験原理解説

初代培養細胞と株化細胞はなにが違うの?【わかりやすく解説します】

・初代培養細胞ってなに?

・株化細胞ってなに?

・初代培養細胞と株化細胞はなにが違うの?

「初代培養細胞と株化細胞ってそもそも何?」、「初代培養細胞と株化細胞はどうやって使い分けるの?」と思っているあなた。

この記事を読むことで、初代培養細胞と株化細胞の違いが分かるようになり、「実験計画を立てるとき」、「論文を読むとき」に役立ちます。

初代培養細胞と株化細胞の違い

初代培養細胞と株化細胞は以下のような特徴があります。

初代培養細胞とは

・生体から取り出してそのまま使う細胞を指す

・準備が大変

・生体のようすをよく反映している

株化細胞とは

・生体から取り出した細胞を操作してがん化させた細胞や、がん組織から取り出したがん細胞を指す

・無限に増殖し扱いやすい

・生体内の細胞とは性質が異なることが多い

つまり、初代培養細胞は使うのが大変だけど生体内を反映でき、株化細胞は簡単に使えるけど生体内の細胞とは違うことが多いということです。

この違いをもとにどちらの細胞を実験に使うのがよいかを判断するわけですね。

それでは初代培養細胞と株化細胞についてもう少し詳しくみてみましょう。

初代培養細胞とは

樹立方法

初代培養細胞は生体から取り出した細胞をそのまま培養したものです。

例えばマウスの神経細胞を使いたい場合には、マウスの脳を酵素などでバラバラにして神経細胞を取り出し、適した特殊な培地で培養します。これによって初代培養神経細胞を得ることができます。

他の細胞を使いたいときも同じように、臓器から細胞を集めてきて培養をすることになります。

メリット

生体内の細胞の状態に近い

初代培養細胞を使うメリットはなんといっても生体内の細胞の状態に近いことです。

生体から直接取ってきた細胞を使うので、生体内の状態が残っており、正確な細胞の情報を得るためには初代培養細胞を使った実験をするのが望ましいです。

デメリット

初代培養細胞を使うデメリットは「細胞の準備が大変」な点です

具体的には以下の点が挙げられます。

・組織の採取をきれいに行う必要がある

・使う細胞種によって培養の最適条件を検討する必要がある

・使える細胞数に限りがある

・使うたびに初代培養細胞を準備する必要がある

組織の採取をきれいに行う必要がある

不要な細胞が混ざらないために、目的の組織以外を採取しないように正確に組織をとってくる必要があります。作業に慣れるまでには少し練習が必要になると思います。

使う細胞種によって培養の最適条件を検討する必要がある

細胞種によって生育するために必要な栄養素や因子、環境が異なります。

そのため培地の添加物やディッシュのコーティングなど培養の条件を最適なものにする必要があります。まずは先行論文を参考に培養をしてみるのが王道の進め方になります。

使える細胞数に限りがある

初代培養細胞の増殖には限界があり、細胞によっては増殖しないものもあります。

そのため、組織から得られた細胞をもとに大量に細胞を増やして実験をすることが難しい場合が多いです。

使うたびに初代培養細胞を準備する必要がある

先ほど話したように、初代培養細胞はあまり増やすことができません。

また細胞によっては、長期間培養することが望ましくないものもあります。

つまり一度組織から取ってきた初代培養細胞は長期間使うことができず、使い終わった後は新たに生体から初代培養細胞を準備して次の実験を行わなければなりません。

株化細胞とは

樹立方法

株化細胞とは主にはがん化した細胞のことで、無限増殖能(無限に増殖する能力)を持っています。

株化細胞の作り方は主に2つあります。

1つ目は正常の細胞を人為的に操作しがん化させる方法です。がん化させるためにはがん促進遺伝子を細胞に導入することが多いです。

2つ目はがん組織からがん細胞を取ってきて株化細胞として使っていく方法です。

メリット

株化細胞のメリットは「使いやすさ」です。

メリットは以下の通りになります。

・すぐに用意することができる

・大量に使うことができる

・扱いが初代培養細胞に比べると簡単

・遺伝子操作がしやすい

すぐに用意することができる

株化細胞は一度樹立すれば、大量に増やして-80℃で半永久的に保存することができます。

そのため、使いたい細胞が存在していれば保存していた細胞を起こしてすぐに利用することができます。

大量に使うことができる

株化細胞は無限増殖能を持っているため、簡単に培養により増やすことができます。

株化細胞を使う実験で、細胞が足りずに困ることはほとんどありません。

扱いが初代培養細胞に比べると簡単

株化細胞はがん細胞であるため、初代培養細胞に比べるとストレスに強く死ににくいことが多いです。初心者にも使いやすい細胞です。

*ストレスに強いから適当に扱ってよいわけではありません。

遺伝子操作がしやすい

初代培養細胞に比べると、株化細胞では外来遺伝子の導入効率が高いことが多いです。

ただし細胞腫によって遺伝子の導入効率は大きく変わるので、一概に全ての細胞で遺伝子操作が簡単なわけではありません。

デメリット

生体内の細胞とは性質が大きく異なる恐れがある

株化細胞のデメリットは生体内の細胞とは性質が大きく異なる恐れがあることです。

株化細胞は使いやすさのためにがん化しているので、正常細胞とは性質が異なります。

ヒト肝癌由来細胞であるHepG2を使って研究をしても、実際の人の肝臓で同じ現象が起きている保証はありません。

細胞株を使うときは「生体内の現象を正確に反映していないかもしれない」と常に考えて、状況に応じて初代培養細胞やマウスやヒトなどの個体を対象とした実験を行いましょう。

まとめ

初代培養細胞は生体化から得た細胞を直接使ったもので、生体の状況を反映しやすい反面、扱いが難しい細胞です。

株化細胞はがん化させた細胞で、使いやすい代わりに生体内の細胞とは性質が大きく異なる危険性があります。

初代培養細胞と株化細胞の特徴を把握したうえで、あなたの研究に適する細胞はどちらであるかを吟味したうえで実験計画を考えてみて下さい。

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