分子生物学実験

【図解付き】リアルタイムPCRの原理【初心者向けにわかりやすく解説】

通常のPCR(コンベンショナルPCR)では目的の遺伝子量を正確に測定することが困難です。

リアルタイムPCRは通常のPCRと異なり、目的の遺伝子を正確に定量することが可能な手法です。別名では定量PCR(qPCR)とも呼ばれます。

この記事ではリアルタイムPCRではなぜ遺伝子量を正確に測定することができるのか、複数あるリアルタイムPCR法の原理について1つずつ解説をします。

遺伝子解析の実験においてリアルタイムPCRは必要不可欠な手法なので、ぜひこの記事を参考に理解を深めて、研究で良い結果を出してくださいね。

PCRの基礎が分からない、PCRの原理を復習したい人はまず「PCRの原理を図解付きでわかりやすく解説【初心者向け】」を読んでみてください。

リアルタイムPCRを行う理由

リアルタイムPCRでは通常のPCRでは難しかった遺伝子発現量の正確な定量が可能となります。リアルタイムPCRは定量性が高いことから定量PCR(qPCR)とも呼ばれます。

先ずは、通常のPCRでなぜ遺伝子発現量を定量できないのかを説明していきます。

通常のPCR法ではPCR反応により目的の遺伝子を増幅した後、アガロースゲル電気泳動により増幅遺伝子を検出します。

PCR反応では以下の図のように、PCRサイクルの初期では遺伝子量が少なく検出限界(機械で検出できる最小限の量)以下となっており、中盤では遺伝子が指数関数的に増幅し、終盤ではプラトーとなり遺伝子量が増えなくなります。

PCRでの遺伝子の増え方

そのため通常のPCRでは遺伝子発現量が違う場合でもプラトーで同じ量となるため、アガロースゲル電気泳動によって検出したときには区別がつかなくなってしまいます。

これが通常のPCRでは定量が難しい理由です。

 

これに対してリアルタイムPCRでは名前があらわす通り、1サイクルごとに遺伝子量をモニターします。

リアルタイムで遺伝子量をモニターすることで、それぞれのサンプルの遺伝子量を正確に把握することができるので高い定量性を確保することができます。

PCRにおいて定量可能なポイント

リアルタイムPCR法ではリアルタイムで遺伝子量をモニターすることで正確に遺伝子発現量を測定することができる

リアルタイムPCRによって遺伝子量を定量できる理由

ここではリアルタイムPCRによってなぜ元の遺伝子量を定量できるのかを解説します。

PCR反応では理論上、1サイクルごとに目的の遺伝子(PCR産物)が2倍ずつ増幅されていきます。サイクル数をnとすると目的遺伝子は2n倍に増幅されます。
つまり最初の遺伝子量をaとすると目的遺伝子の量はnサイクルの時に、a×2nとなります。

PCRでは1サイクルでPCR産物量が2倍に増幅される

「1サイクルでPCR産物が2倍になる」ことをもとにして、遺伝子量が異なるサンプルが、どのように増幅されるかを考えてみます。

文字だけではわかりにくいので以下の図を見ながら考えてみてください。

リアルタイムPCRで遺伝子量を定量できる理由

ここでは遺伝子量がa、1/2a、1/4a、1/8aの4つのサンプルを想定します。

目的の遺伝子が特定の量になるまで増幅されるタイミングを考えてみると、元の遺伝子量が多い方が増幅されるのが早いので、遺伝子量がaのサンプルが一番早く増幅され、1/8aのサンプルが最後に特定の量まで増幅されることになります。

さらに1サイクルで遺伝子量は2倍となるので、元の遺伝子量が2倍違えばちょうど1サイクルの差で増幅されます。

具体的な数値をもとに考えてみます。遺伝子量がaのサンプルが特定の量まで25サイクルで増幅されたとします。遺伝子量1/2aのサンプルはプラス1サイクルで2倍の差を埋めることができるので、26サイクルで特定の量まで増幅されることがわかります。

同じように考えると1/4aのサンプルは27サイクル、1/8aのサンプルは28サイクルで増幅されます。

つまり、「特定の量まで増幅されるタイミングが比較したいサンプルよりも1サイクル早いと元の遺伝子量が2倍となる」ことがわかります。

このように特定の量まで増幅されたときのサイクル数を比べることで、元遺伝量が基準となるサンプルの何倍であるかを求めることができます

この特定の量まで増幅されたときのサイクル数をCt値といいます。

Ct値を使ってサンプルの遺伝子量を表すと以下のようになります。

基準サンプルと比べたときの調べたいサンプルの遺伝子量

2(基準サンプルのCt値―調べたいサンプルのCt値)

リアルタイムPCRの原理

ここではリアルタイムPCRではどのようにしてリアルタイムで遺伝子量をモニターするかを解説します。

リアルタイムPCR法では蛍光色素を利用することにより、リアルタイムで遺伝子発現量をモニターすることができます。

蛍光色素を利用する方法には以下の2酒類の方法があります。

  • DNA結合色素(インターカレーション法)
  • 配列特異的プローブ(ハイブリダイゼーション法)

DNA結合色素(インターカレーション法)

インターカレーション法では、二本鎖DNAに入りこみ蛍光を発する性質を持つ蛍光物質を利用します。インターカレーション法に使われる蛍光物質としてはSYBR Greenが挙げられます。

SYBR Greenの蛍光の強さ(蛍光強度)はDNA量に比例して上がるので、蛍光強度を測定することでDNA量を定量することができます。

インターカレーション法のイメージ図

インターカレーション法は低コストで簡便な方法なので、初心者や経験の浅い人におすすめの方法です。

一方で、インターカレーション法では蛍光色素はすべてのDNAに入り込み蛍光を発するために、非特異的に増幅された遺伝子も目的の遺伝子と同様に測定されてしまいます

このデメリットを克服する方法に融解曲線解析(メルティングカーブ解析)があります。

メリット

  • 安い
  • 簡単

デメリット

  • 非特異的な産物も検出してしまう

融解曲線解析(メルティングカーブ解析)

インターカレーション法では非特異的な増幅産物も測定されてしまいます。非特異的な増幅産物を見分けるために融解曲線解析(メルティングカーブ解析)を行います。

融解曲線解析はPCR反応でのDNA増幅が終了したのちに行います。

低い温度から徐々に温度を上げていき、各温度でのSYBR Greenの蛍光強度を調べます。

二本鎖DNAは温度が高くなると熱変性により一本鎖に解離します。一本鎖に解離する温度はDNAの配列や長さに依存するため、増幅産物が異なれば解離温度が変わります

そのため単一の遺伝子が増幅される場合は、融解曲線解析で得られる解離温度は1つだけになります。一方で非特異的な反応が起こり複数の遺伝子が増幅された場合は複数の解離温度が検出されます。

融解曲線解析ではこうした原理を利用することで、PCRで非特異的な反応が起きているかどうかを調べることができます。

配列特異的プローブ(ハイブリダイゼーション法)

リアルタイムで遺伝子量をモニターする2つ目の方法について解説します。

ここでは代表的な方法であるTaqManプローブを使った方法について説明をしていきます。

TaqManプローブは標識物質が結合した短い一本鎖の配列特異的なDNA分子です。

TaqManプローブはPCRにより増幅する目的遺伝子に結合するDNA配列を持っていて、両末端はそれぞれレポーターと呼ばれる蛍光色素クエンチャーと呼ばれる蛍光色素を阻害する物質で標識されています。

それではTaqManプローブの原理を解説していきます。

TaqManプローブはPCR反応開始時には蛍光色素がクエンチャーによって阻害されているために、蛍光を発しません

TaqManプローブはアニーリング時に目的遺伝子に結合します。

その後ポリメラーゼが目的遺伝子を伸長しているときに、目的遺伝子上でポリメラーゼとTaqManプローブが出合います。

リアルタイムPCRで使用されるTaqポリメラーゼは5’→3’エキソヌクレアーゼ活性(5’→3’方向へDNAを分解する活性)を持っているため、目的遺伝子に結合しているTaqManプローブを分解します。

TaqManプローブは分解されることで蛍光色素とクエンチャーの距離が離れることとなり、結果として蛍光色素はクエンチャーに阻害されなくなり蛍光を発するようになります

この反応は目的遺伝子量に比例して起きるので、目的遺伝子が多いほど蛍光強度が高くなります。

TaqManプローブの原理

TaqManプローブを使った方法では、TaqManプローブは目的遺伝子上でのみ分解されて蛍光を発するようになるため、インターカレート法と比べて目的遺伝子量を特異的に調べることができるというメリットを持っています。

一方で、目的遺伝子ごとにTaqManプローブを設計・作製する必要があるので、コストや手間がかかるというデメリットがあり、初心者や経験の浅い人にはハードルの高い手法となります。

メリット

  • 目的遺伝子量を特異的に調べることができる

デメリット

  • 目的遺伝子ごとに適切なプローブを作る必要がある
    (高い・手間がかかる)

関連内容の解説

リアルタイムPCRはPCR法を基礎とした応用的な手法となります。

そのためPCRや関連手法の理解なしにはリアルタイムPCRを正しく行うことができません。

以下に関連手法の解説記事を用意しているので、苦手な内容に関して勉強して、ぜひクオリティーの高い実験を行っていいデータを出せるよう頑張ってください。

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