希望を胸に研究室に入ったけど、思ったより研究が難しくて「研究が進まない」「研究成果がなかなかでない」と焦っている人は多いと思います。
うまく解決できればよいのですが、研究がうまくいかなすぎて、「研究室に行きたくない」「自分には研究の才能がないんだ」「研究者は諦めたほうがいいのかな」と悩みを抱えたり精神のバランスを崩してしまう人も少なくないのが現実です。(私も精神的にきつくてカウンセリングに通っていたこともありました)
この記事では著書『なぜあなたの研究は進まないのか』をもとに、大学で助教をしている私Hiro(@THiro70217938)の今までの体験を交えながら研究がうまく進まないときの考え方や対処法を紹介していきます。
- 研究成果が思うように出なくて解決策を知りたい人
- 今の現状から抜け出したい人
この記事を読めば「研究が進まない」とか「研究室に行きたくない」といった悩みを解決するための考え方や行動方法を得ることができます。
ぜひ最後まで読んでいってください。
研究がうまくいかないときの考え方・対処法7選
思考を伴う行動をする
研究が進まないと困っているときに、机で座ったまま延々と解決策を考えている人も多いのではないでしょうか。もちろん悩みが解決することもありますが、残念ながら同じ思考が巡るだけで前に進まない場合が圧倒的に多いです。
頭の中だけで考えてしまうとただ悩んでいるだけの状態になってしまい、考えがまとまりません。
慶応大教授の安宅和人先生は著書『ISSUE DRIVEN』で以下のように書いています。
・「悩む」=「答えが出ない」という前提のもとに、「考えるフリ」をすること
・君たちの賢い頭で10分以上真剣に考えて埒が明かないのであれば、そのことについて考えることは一度止めたほうがいい。それはもう悩んでしまっている可能性が高い
出典:イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」
この悩むだけの状態を解決するためには、少しずつでも実際に行動することが大事です。大きく前進をする必要はなく「少しずつでも前に進む」と考えるのが大切になります。
このためには困っていることや出来ることを細かく分けて明確にしてみましょう。漠然とした大きなタスクを持っていても人間はなかなか行動に移すことができません。そのためできるだけ具体的なプランに落とし込んで、行動に移すモチベーションを持てるレベルに持っていくことが重要です。このように考えながら行動することで、ただ悩んでいた時よりも研究を進めるためのヒントが得られます。
また具体的な行動については次以降の項目に書いているので参考にしてください。
周りの人に相談しアドバイスをもらう
研究がうまくいかないときに「自分の研究は自分で進めないといけない」「簡単に相談していいのだろうか」「バカにされるのではないか」と思い、なかなか周りの人に相談できない人もいるのではないでしょうか。
気持ちはわかりますが研究は一人では進められるものではなく、研究を進めるのが上手い人ほど周りの人とのコミュニケーションを大事にしています。
実験手法に関しては「餅は餅屋」というように、実際にその手法を使って結果を出している人に教えてもらうことが一番効率がいいです。
実験手法に関してはプロトコルや論文を見るだけではわからないノウハウが多く存在するので、上手くいっている人の手法を一度見せてもらうのが何よりも勉強になります。研究室内に同じ手法を使っている人がいない場合は、他の研究室や他大学に教えてもらいに行くくらいの行動力は持っておくべきでしょう。
また研究を行う上での考え方に関しては、先輩や指導教官に相談することでよりレベルの高い助言をもらうことができるので、できるだけ自分よりレベルが高い人に相談してみてください。同レベルやレベルが自分より低い人に相談しても、一時的に気が晴れるかもしれませんが根本の解決にはつながらないことが多いです。
また相談をするときに自分の考えを話していると、意外に頭の中が整理されて問題を自己解決できることもあります。
最後におまけですが、現在はすごくスピードで技術が進んでいっており、昔に比べると一つの論文に求められるデータ量が多くなっています。そのため様々な手法を使って実験を進める必要に迫られる機会も増えています。
この先は複数分野を誘導させることも必須となるため、今のうちに自分一人でできることには限界があり様々な人の力を借りることが重要であることを理解し、他の研究者とのコミュニケーション力も磨いておきたいところです。
研究の目的や仮説を見つめなおし明確にする
先ずは研究が行き詰った時には、もともとの研究の目的や仮説を見つめなおしましょう。
東大の佐藤雅昭先生は『なぜあなたの研究は進まないのか』で以下のように述べています。
研究で行き詰ったとき、その困難を突破する第1歩は、その研究の意義と仮説または目的に立ち返ることです。
出典: なぜあなたの研究は進まないのか
研究の意義と仮説や目的を考えなおすことで、そもそも何のために研究をしているのかを明確にすることができます。
私はよく経験するのですが、実験に没頭していると視野が狭くなり、今行っている実験手法でデータを出すことだけを考えてしまいます。しかし今行っている実験は研究を進めるための手段の一つに過ぎないことも往々にしてあります。
研究を進めるためには別の実験を手段を使える場合もありますし、まったく別の切り口からアプローチすることも可能です。しっかり研究の意義を見つめなおすことで視野が広がり、新たな解決策を発見できるかもしれません。
いくらやってもうまくいかない実験系には見切りをつけて代替策を探すことも、立派な研究アプローチの一つです。
ネガティブデータを正しく解釈する
研究を始めたての人に多いのですが、仮説と異なるデータが出たときに「ネガティブデータだ」「失敗した」といってデータを捨てていませんか。
実験手法には問題がなく仮説と異なるデータが得られた場合には、そのデータは非常に価値が高いデータであるかもしれません。
仮説とは私たちが考えただけのものであり、真実とは異なる場合が多いです。つまり仮説は間違えているかもしれない考えであり、得られたデータこそが真実を表しているのです。
仮説通りに研究が進むとストレスがなく実験が進められ楽ですが、人の考えつくことしか結果として得られません(センスのある人は仮説の段階でめちゃくちゃ面白いことを考えていますが)。
仮説とはまったく違う思いもつかないデータが得られた場合は、人の想像を超える面白いデータが得られたのかもしれません。いったん落ち込む気持ちはわかりますが、ネガティブデータが得られてもすぐに気持ちを切り替えて、何かあるかもしれないと思い、ニュートラルな気持ちでデータを深く考察する癖をつけておいてください。
研究が進まないと思っているけど、実はネガティブデータに隠れている大発見を見逃しているなんてことがないようにしたいですね。
手持ちのデータを一度まとめてみる
・データが揃っていない(ように見える)からこそ、あえて論文の形を作ってみるのです。
・PowerPointのスライド形式にするのが便利で、Figureを中心とした話の展開を考えます。
出典: なぜあなたの研究は進まないのか
データが出ないときには、一度「論文形式でデータをまとめる」か「学会発表に出るつもりでスライドを作成」してみましょう。
手持ちのデータで穴があってもいいので、いったん論理的な流れがあるストーリーを組み立ててみましょう。すると自分の研究を広い視点で見返すことができ、必要となるデータや研究の弱点が見えてきます。逆に今やっている実験が実はそこまで重要でないことがわかることもあります。このようにデータをまとめてみることで、普段は気づかない視点から研究を見つめなおすことができます。
意外に研究をしているときは視野が狭くなってしまうので、定期的にデータを整理することが実験をうまく進めるための大事なポイントになります。
またデータをまとめることで論文化を意識して実験を行うことができるので、データが揃っていざ本格的に論文を書こうと思ったときに、根拠が弱いことや追加実験が大量に必要なことに気づくことが減るといったメリットもあります。
私は実際に後輩の学会指導をしているときに、データを全体を見つめたときに足りないデータに気が付き、追加実験を立案したこともあります。
また私の所属ラボでは、普段の進捗発表だけでなく論文化を見据えたミーティングを開くことで、直近のデータを見るだけでは思いつかいないアイデアをたくさん得ることができました。
十分な睡眠をとる
軽視されがちですが、研究が上手くいっていないときほどゆっくり休んで十分な睡眠をとりましょう。
スタンフォード大学の研究では、睡眠の質を上げるだけでスポーツ選手の運動能力が大きく向上することが示されています。より頭脳を使う必要がある私たちが睡眠を削れば研究のパフォーマンスが低下することは言うまでもありませんね。
さらに睡眠が不足していると思考もネガティブになってしまい、泥沼にはまってしまうでしょう。
研究が進まなくて焦っているとは思いますが、現状を脱却するためにぜひ十分な睡眠時間は確保して下さい。
休んだり逃げてもいいことを理解しておく
最後に今までとは少し視点が違いますがぜひ頭に入れておいてほしい考え方になります。
『なぜあなたの研究は進まないのか』で佐藤雅昭先生は以下のように述べています。
・研究は常にあなたの人生の選択肢の1つであって、すべてではない
・自分の健康より大切な研究、あるいは自分の家族より重要な研究などない
出典: なぜあなたの研究は進まないのか
もしあなたが研究を精一杯頑張って、それでも結果が出ずに精神的にまいっているときには、上記の言葉を思い出してください。
研究は大事なことではありますが、世の中のすべてではないので精神的にきついときには短期間(1~2週間)でも研究から離れてみてリフレッシュをすることも必要です。
また研究がすべてではないことを思っておくだけでも、研究がうまくいかないときにも精神的に少しは楽になると思います。
どうしても研究をすることが苦痛な時には、研究から身を引くことも考えてください。
佐藤先生もおっしゃているように、あなたの健康より大事な健康などないのですから。
参考書籍
今回の記事は東京大学の佐藤雅昭先生の書かれた『なぜあなたの研究は進まないのか』を読んで、私の今までの研究人生で大事だなと思ったことを私の意見を組み込んでまとめたものになります。
『なぜあなたの研究は進まないのか』では研究が進まないときの具体的な考え方だけでなく、研究を続けていく人であれば知っておくべき基礎項目がわかりやすく解説されています。空き時間にでも読めるように非常に読みやすい内容になっています。
興味がある人は以下のリンクから先ずはチェックしてみてくださいね。
まとめ
研究がうまく進んでいないと悩んでいる人は以上の内容を先ずは試してみてください。
正しい考え方を取り入れることで徐々に研究が進んでいってくれることでしょう。
最後にもう一度ポイントをまとめておきます。
- 思考を伴う行動をする
- 周りの人に相談しアドバイスをもらう
- 研究の目的や仮説を見つめなおし明確にする
- ネガティブデータを正しく解釈する
- 手持ちのデータを一度まとめてみる
- 十分な睡眠をとる
- 休んだり逃げてもいいことを理解しておく
いきなりは成果が出ないかもしれませんが、この記事で解説した考え方を取り入れることで確実にあなたの成長につながります。
あなたが日々少しずつ前進し、ハッピーな研究ライフを送れることを祈っています。
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