分子生物学実験

吸光度による核酸濃度・純度の測定【DNAとRNA濃度・純度測定のポイントを解説】

核酸の吸光スペクトル

この記事では、吸光度計(NanoDrop)を使った核酸(DNA・RNA)濃度・純度の測定を行う際のポイントと注意点を解説します。

NanoDropを使うと、何も知らなくても必要な情報はすべて出てくるのですが、ここでは最低限知っておいたほうが良いポイントを解説していきます。

原理

まずは簡単に吸光度計による核酸測定の原理を解説します。

そもそも吸光度とは特定の波長の光を物質に当てたときの吸収された光の割合のことです。

DNAとRNAは260 nmの波長の光をよく吸収する性質を持っています。これを利用して260 nmの光に対する吸光度を測定することでDNA、RNAの濃度を調べることができます。

ちなみにですが、核酸の塩基部分が260 nmの光を吸収します。

測定方法

吸光度計を用いて測定します。吸光度計の使い方は割愛します。

研究室レベルでは、多くの場合はNanoDropを使うことになると思いますのでマニュアルを読んでみてください。簡単に測定ができます。

一つ注意点を挙げると、Blankは正しい溶液で取るようにしましょう。

NanoDrop 超微量分光光度計および蛍光光度計

測定結果の見方

ここでは、結果の見方と考え方を解説していきます。

用語説明

一つ用語説明をしておきます。

XXX nmの光の吸光度をA XXXと表記します。これは吸光度を意味するAbsorbanceの頭文字のAに由来します。

他にも、光学密度を意味するOptical Densityに由来するODという表現もあります。

つまり260 nmの吸光度はA260あるいはOD260と表されます。

この記事ではA260の表記で統一します。

波形(スペクトル)

まずは、測定が終わったら波形(スペクトル)データを見てみましょう。

下図が理想的な核酸の吸光スペクトルになります。

このように、260 nmが吸収極大となり、低波長側では230 nmが変曲点となっています。

極端に下図とスペクトルデータが違う場合は、精製した核酸の純度があまり良くないということになります。

次以降の項目で、見るべきポイントと精製がうまくいっていない場合の問題点・改善点について解説します。

A260 (核酸濃度の指標)

上記で説明したように、核酸は260 nmの波長の光をよく吸収し、実際に260 nmが吸収極大となります。

核酸の濃度とA260の関係が分かっているため、A260がわかれば核酸濃度が算出できます。

DNAとRNAで異なるので注意してください。

DNA溶液の場合は濃度が50 µg/mLの時A260が1となります。

RNA溶液の場合は濃度が40 µg/mLの時A260が1となります。

つまり下の式で核酸の濃度が算出できます。

  • DNA濃度(µg/mL) = A260 × 50
  • RNA濃度(µg/mL) = A260 × 40

A260/A280(核酸純度の指標)

次にA260/A280についてです。A260/A280はA260をA280で割った値のことです。つまりはA260とA280の比です。

A260/A280を見ることで、核酸の純度がわかります。

260 nmや280 nmの光を吸光するのは核酸だけではありません。

実際、タンパク質も核酸と似た吸光パターンを示します。タンパク質の場合が280 nmが吸収極大となります。

つまり、精製した核酸にタンパク質が混入しているとA280が高くなってしまいます。

その結果A260/A280の値が低くなってしまいます。

では、実際にA260/A280がいくらであればいいのかですが、

これは以下のようになっています。

理想のA260/A280

  • DNAの場合  1.8以上
  • RNAの場合  2.0以上

つまりA260/A280が上記の値以下の場合は、タンパク質が混入していることになります。

少なくとも、A260/A280が1.6台になったときには再精製をすることをおススメします。

タンパク質の混入を防ぐための対処法ですが、タンパク質はフェノールクロロホルム抽出の時に界面に位置するため、回収できる核酸の量が多いsampleの時は界面近くの液は吸わないようにすることで、純度が上がると思います。

回収できる核酸の量が少ない場合は、界面近くの液を吸わないとロスが出てしまうため、ピペットマンを使うテクニックを頑張って向上させてください。

A260/A230(核酸純度の指標2)

A260/A230も核酸純度の指標となります。

こちらでは、有機溶媒や塩の混入を知ることができます。

核酸の精製過程に用いた、フェノールエタノールグアニジンイソチオシアネートが混入していると、A260/A230の値が低くなります。

理想のA260/A230

DNA・RNA共に 1.0以上(できれば2.0以上)

フェノール、エタノール、グアニジンイソチオシアネートはこの先に酵素反応を阻害するので、A260/A230が基準を下回った時には、再精製を行ってください。経験上は、再度エタノール沈殿を行うだけでA260/A230の値がよくなります。

混入を防ぐ対処法は

フェノールはフェノールクロロホルム抽出の時にフェノール層を吸わないようにする、クロロホルム抽出の回数を増やすことで混入が防げます。

エタノールはエタノール沈殿後に残らないように、しっかり乾燥させるようにしてください。

グアニジンイソチオシアネートなどの塩はエタノール沈殿の時の洗浄作業をしっかり行うことで、除去することができます。洗浄ステップを増やしてみてもいいと思います。

注意点(核酸の分解の程度はわからない)

最後に注意点です。

吸光度測定を行い、十分量の核酸が得られ、さらにA260/A280とA260/A230の値も申し分ない場合でも、sampleが完璧な状態であるかはわかりません。

濃度・純度がよくても、核酸が分解してしまっている可能性があるからです。

実際に、核酸が分解していても吸光スペクトルはほとんど変わらないため、分解の有無は吸光度測定では区別することが出来ません

私は一度、DNAをDNaseにより分解して吸光度測定を行ったことがありますが、分解前と同様の吸光度スペクトルを示しました。

ですので、吸光度測定の結果がよくても安心せず、分解の有無も確認してください。

核酸の分解の程度は、電気泳動を行うことで確認することができます。

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吸光度測定では核酸の分解の程度を調べることはできない

最後に

以上が核酸の濃度と純度を測定するときの、ポイントや注意点となります。

是非、参考にしていただいて正しい実験を行ってください。

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