RNA work

RNAを分解から守る方法と考え方~解説記事~

この記事では、RNAを扱う上での注意事項を説明してきます。RNAはとても分解しやすいので、注意事項を抑えて作業をすることがきれいなRNAを得るために重要となってきます。

今回は最もRNAを扱う作業で注意しないといけないRNA分解酵素についての対処法をメインに解説をし、最後にその他の注意事項にも少し触れていきます。

・RNA分解酵素(RNase)

RNA分解酵素(RNase)はその名の通り、RNAを分解する酵素で、私たち人間やマウスなどの実験動物も持っている酵素になります。このRNaseによる分解がRNA抽出で最も注意しないといけない要因になります。このRNaseがsampleに混入してしまうと、RNAがズタボロになってしまいます。

結論から言うと以下に注意して作業をすることでRNAの分解をほとんど防ぐことができます。

以下で一つずつ詳しく解説していきます。

マスク、グローブを着用しsampleへの汗、唾液の混入を防ぐ

RNaseによってRNAが分解される原因の1つ目は、実験者のRNaseの混入です。私たちの汗や唾液中にもRNaseは含まれています。従って、おしゃべりをしながら実験をしたり、不用意にsampleに触れてしまった場合にRNaseが混入してしまします。対処法としては、当然のことですがしゃべらないことや、マスクとグローブをすることがスタンダードな方法となります。

なるべくRNA専用器具を使用し、RNaseが付着している可能性のある器具の使用を避ける

使用する器具についても注意が必要となります。器具に関しては、研究室によってはRNAを対象とした実験専用のピペットマン、チップ、チューブ、部屋などを用意する場合もあります。このようになるべく汚染の可能性の低い器具を使っていくのが確実な方法となります。

使用する試薬はDEPC処理を行うことでRNaseを不活性化しておく

試薬に関してはRNaseの分解処理を行って、RNase freeの状態とした試薬を使用します。RNaseの分解には、DEPC (Diethylpyrocarbonate:ジエチルピロカーボネート)を使います。具体的には水やPBSに対して0.1%のDEPCを加えて、よく混和したのちに37℃で温め1-2時間程度インキュベートします。これによってRNaseが分解されます。ただしDEPCは発癌性物質であると考えられているため、この後にDEPCを分解するためにオートクレーブ処理を行う必要があります。また、DEPCを使用するときの注意点として緩衝剤として汎用されているTrisはDEPCによって分解されてしまうので、Tris溶液をDEPC処理することはできません。

実験動物に由来するRNaseがsampleに作用しないようする

実験動物からの組織の提出は素早く行い、保存は-80℃で行う

タンパク質変性剤を含んだ溶液(Sepasol、ISOGEN、TRIzolなど)の中で組織をホモジナイズする

RNaseによってRNAが分解される原因の2つ目は、実験動物自身の持つRNaseによるRNAの分解です。これは少し話が複雑になります。人間もマウスもRNAとRNaseの両方を持っているのですが、普段生きているときにはRNAがRNaseの脅威にさらされることはありません。しかし、実験の時にはRNAとRNaseが出会ってしまい、RNAが分解の危機にさらされてしまいます。これなぜかというと、普段RNAは細胞内(細胞質)に存在しているのでRNaseと出会わないのですが、組織を取り出すときにマウスを安楽死させてしまうと、細胞の死に伴って細胞構造が壊れて細胞外にRNAがでてきてRNaseと出会うことになるからです。従って、提出した組織を氷上などでしばらく放置することはRNA分解のリスクを高めることになります。つまり、素早く組織を摘出したのちに、いち早くRNaseの働きにくい超低温(-80℃)にすることが重要となります。

また、もう一つの工夫としては組織をRNaseの活性を阻害する溶液中で、素早くホモジナイズすること(すりつぶして均一化すること)が挙げられます。このRNaseの活性を阻害する溶液は市販されており、Sepasol、ISOGEN、TRIzolといった商品が有名です。この商品にはチオシアン酸グアニジンやフェノールといったタンパク質変性剤が入っているので、溶液中のRNaseは変性して不活性化されます。ここでも注意が必要で、ホモジナイズすることが非常に重要となってきます。たまに組織を上記の溶液に浸して満足する人がいますが、このような溶液はすぐに組織の深部にまで浸透することはないために、組織内部のRNaseは活性を保ったままとなりRNAを分解することができます。従って上記溶液中で、組織をホモジナイズして組織中の全てのRNaseをいち早く変性させることが最重要となります。

・そのほかの注意点(熱・pH・物理刺激・光)

あとはそのほかの注意点となります。これらの項目によってRNAが分解されることはRNaseによる分解に比べるとまれだとは思います。

先ず熱に関してですが、熱をかけるとRNAは分解します。RNAを使用するときの作業で熱をかけてしまうシチュエーションとして考えられるのは、ホモジナイズの時にあると思います。ホモジナイズに用いる機械によっては熱が発生するものがありますので、その時はsampleを氷で冷やしながら作業をするようにします。また、可能であればRNA sampelは氷上で扱うのが望ましいです。

次にpHです。こちらは極端な酸性、塩基性状態にするとRNAが変性してしまいます。これも保存のときなどに、水やTE(Tris-EDTA)を溶液として使用しpHをなるべく中性付近に保つように心がけるとよいです。

残りは物理刺激や光になります。こちらはvortexやピペッティングを過度に行って物理刺激を与えすぎないことや、紫外線(UV)をsampleに当てないことを注意すれば問題ありません。

~最後に~

以上の注意点を念頭において、実験をすることでRNAの分解のほとんどは回避することができます。今回は触れていないですが、組織によってRNaseの活性が高い組織などがありますので、この記事の他にもいろいろなことを勉強してみて、常に向上する意識を持って実験に取り組んでみてください。皆さんの実験のクオリティーの向上の一助となっていれば幸いです。