分子生物学実験

RT-PCRの原理を解説【逆転写酵素・プライマー・手順を解説】

  • RT-PCRって普通のPCRと違うの?
  • RT-PCRはどんな時に使うの?何に使うの?
  • 実際にどうやってRT-PCRを行うの?

この記事を読むことで上記の疑問を解消することができます。

この記事は「PCRは知っているけどRT-PCRってなに?」と思っているような初心者でもわかるように、図解を使いながら基礎的な部分からやさしく解説をしていきます。

RNAを対象にした分子生物学的手法を使った研究を行う人には必須の内容なのでぜひ参考にしてくださいね。

この記事でわかること

  • RT-PCRを使用する目的
  • 逆転写の基礎知識
  • 逆転写に使うプライマー3種類
  • 逆転写の手順
「PCRもちょっと自信がないんだけど…」という人はこちらのPCRの解説記事を参考にしてね!
PCRの原理を図解付きでわかりやすく解説【初心者向け】 PCRではどんな原理でDNAが増えるの? PCRをするには何が必要なの? PCRでDNAを増やすとなんの役に立つ...

RT-PCRとは

PCRを使うとDNAを簡単に増幅することができますが、RNAの増幅を行うことができません。この問題はRNAをDNAに変換してからPCRを行うことで解決することができます。

RNAをDNAに変換する反応を逆転写といい、逆転写を利用することから逆転写を意味するReverse Transcriptionの頭文字をとってRT-PCRと呼ばれます。

重要

  • RT-PCRでRNAを増幅することができる
  • Reverse Transcriptionの頭文字をとってRTと呼ぶ
RT=PCRの流れ

RT-PCRを行う目的・利用方法

RT-PCRを行うことでRNAを増幅できますが、RT-PCRは何のために行うのでしょうか。

RT-PCRは以下の2つの用途で使用されることが多いです。

  • RNAの量を調べる
  • 遺伝子をクローニング(単離)する

それでは一つずつ見ていきましょう。

RNA量を調べる

PCRを使うと遺伝子を増やすことで遺伝子の量を調べることができます。

つまりRT-PCRではRNAに由来するDNAを使ってPCRを行うことから、RNAの量を調べることができます。

RT-PCRで出来ること

特定の臓器や細胞が

  • 興味のあるRNAを発現しているかを調べる
  • どれだけRNAを発現しているを調べる

そもそもなんでRNAを調べる必要があるんだろうと思った人はこちらの記事を参考にしてください。

転写因子が臓器のRNA発現を規定する
なぜRNA発現量を調べるのか ~解説記事~この記事では、なぜRNA発現量を調べるのかについて基礎事項に絞って説明していきます。内容はおもに3つに分かれています。 遺伝子発現解析...

遺伝子をクローニングする

もう一つの用途は「遺伝子をクローニングして細胞に発現させる」です。

クローニングとは「色々な遺伝子が混ざっている中から目的としている1つの遺伝子だけを得ること」をさします。

目的としている単一の遺伝子を得るために、PCRによって目的の遺伝子のみを大量に増やす必要があるのです。

RNAをもとにクローニングした遺伝子を使うことで、興味のある遺伝子をマウスや細胞に導入して機能を調べることができます。



逆転写

逆転写とはRNAをもとにDNAを合成する反応のことです。

ここでは逆転写について詳しく解説していきます。

  • 逆転写とは【cDNA・逆転写酵素】
  • 逆転写酵素
  • 逆転写反応につかうプライマー
  • 逆転写の手順

逆転写とは【cDNA・逆転写酵素】

逆転写とはRNAからDNAを合成する反応で、「遺伝情報はDNA→RNA→タンパク質の順に伝達される」というセントラルドグマの流れを逆行する反応です。

セントラルドグマと逆転写

逆転写によって合成されたDNAは、基となったRNAと相補的な塩基配列を持つため相補的DNA(Complementary DNA:cDNA)と呼ばれます。

この記事ではこの先cDNAと表記します。

相補的な塩基配列とは

基となるRNAの塩基配列 相補的なDNAの塩基配列
A(アデニン) T(チミン)
U(ウラシル) A(アデニン)
C(シトシン) G(グアニン)
G(グアニン) C(シトシン)

 

逆転写はウイルスから見つかった反応で、ウイルスの中でもRNAをゲノムとしているレトロウイルスが感染した宿主の細胞内で増殖するために利用している反応です。

簡単に説明すると、レトロウイルスは宿主の細胞に感染した後RNAをDNAに逆転写し、DNAを宿主の細胞に組み込みます。感染した細胞はこのレトロウイルスに由来するcDNAからmRNAを経てタンパク質を作ってしまうので、このタンパク質を利用して新たなウイルスがうまれてしまいます。これを利用してレトロウイルスは増殖していくのです。

逆転写反応を触媒する(進める)酵素を逆転写酵素といいます。

逆転写酵素は1970年にウィスコンシン大学のハワード・テミンとマサチューセッツ工科大学のデビット・ボルティモアがそれぞれ異なる研究によって発見しました。

ハワード・テミンとデビット・ボルティモアは逆転写酵素を見つけた功績で、1975年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

逆転写反応に使うプライマー

逆転写反応は逆転写酵素とRNAだけでは起きません。

PCRと同じで逆転写の開始点となるプライマーが必要です。

逆転写には以下の3種類のプライマーが使われます。

  • オリゴdTプライマー
  • ランダムプライマー
  • 遺伝子特異的なプライマー

オリゴdTプライマー

オリゴdTプライマーとは12~18個のデオキシチミジン(dT)からなるプライマーです。

5′-TTTTTTTTTTTTTTTT-3’ ←こんな感じです。

mRNAを逆転写したい時に使用します。

mRNAは3’末端にpoly A tail(ポリAテール)というAが100-300ほど連なる特徴的な配列を持っています。

Aと相補的な塩基であるTを持ったオリゴdTプライマーはmRNAのポリAテールに結合するので、オリゴdTプライマーを使うとRNAの3’末端から逆転写反応が開始されます。

オリゴdTプライマーを使うメリットは3’末端から逆転写を始めることで完全長のcDNAを得やすいことです。

一方で5’側の配列を持ったcDNAを得にくい、ポリAテールを持たないrRNAやtRNAが逆転写されないといったデメリットもあります。

オリゴdTプライマーとは

ランダムプライマー

ランダムプライマーはその名の通りA,T,G,Cがランダムに構成されているプライマーです。

一般的には6個のヌクレオチドから構成されており、ランダムヘキサマーと呼ばれています。

ランダムプライマーのイメージ図

ランダムプライマーはあらゆるRNAに結合することができ、rRNAやtRNAを含む幅広いRNAを逆転写することができます。

一方でRNAの様々な領域から逆転写が開始されるため完全長のcDNAが得られにくいというデメリットがあります。

遺伝子特異的なプライマー

遺伝子特異的なプライマーは標的とする遺伝子に相補的な配列を持つプライマーのことです。

遺伝子特異的なプライマーでは特定の遺伝子を増幅することができ、1ステップRT-PCRという同じチューブで逆転写とPCRを続けて行う手法を使うことができます。

しかし何度も逆転写を行わないといけないため、一つのサンプルから複数種類のRNAを増幅させる場合にはオリゴdTプライマーやランダムプライマーが使われます。

まとめ

プライマー プライマーの配列 メリット
オリゴdTプライマー Tが12~16個 完全長のcDNAを得られる
ランダムプライマー ランダムな6ヌクレオチド rRNAやtRNAも逆転写できる
遺伝子特異的なプライマー 標的の遺伝子と相補的 目的の遺伝子をより特異的に増やせる

逆転写の手順

逆転の手順は以下の通りとなります。

  1. RNA溶液を65℃で加熱後、氷冷することでRNAの高次構造を解消する
  2. 逆転写酵素・プライマー・バッファーを加える
  3. 37℃~50℃で逆転写反応を進行させる
  4. 高温(70℃~98℃)で加熱し逆転写酵素を失活させる

RNA溶液を65℃で加熱後、氷冷することでRNAの高次構造を解消する

RNAは一本鎖ですが分子内結合によって、高次構造をとっています。

高次構造をとっているままのRNAを使用するとうまくプライマーが結合できないため逆転写の効率が低下してしまいます。

そこでRNAを一本鎖にするために、65℃でRNA溶液を加熱後氷冷を行います。

逆転写酵素・プライマー・バッファーを加える

ここで逆転写に必要な試薬類を加えます。

逆転写酵素は熱に弱いため、なるべく反応の直前に加えるようにしてください。

37℃~50℃で逆転写反応を進行させる

逆転写酵素の指摘温度である37℃付近で逆転写反応を進行させます。

実験に使われる逆転写酵素は熱に強く改良されているので、RNAが一本鎖の状態を保ちやすい50℃で反応させることにより効率よく逆転写が進みます。

一般的には初めに37℃で逆転写をし、続けて温度を50℃にあげて高次構造をとりやすいRNAを逆転写していきます。

高温(70℃~98℃)で加熱し逆転写酵素を失活させる

最後に逆転写が終了したら反応液を高温にして逆転写酵素を失活させます。

この先の実験で逆転写は不要なので、余計な反応が起きないように逆転写酵素を失活させるのです。

逆転写の実験の流れ

まとめ

  • RT-PCRは逆転写によりRNAからcDNAを合成して行うPCRのこと
  • RT-PCRによってRNA量を調べたり、遺伝子のクローニングができる
  • 逆転写にはウイルスから発見された逆転写酵素を利用する
  • 逆転写に使うプライマーにはオリゴdTプライマー・ランダムプライマー・遺伝子特異的なプライマーの3種類がある
  • 逆転写は3段階の温度変化により行うことができる

以上の内容はRT-PCRの基礎の部分になります。基礎ですが非常に重要な点なのでしっかり理解して実験を行ってください。

もし忘れた人は復習してくださいね。

RT-PCRを行うためには対象のサンプルからRNAの準備する必要があります。

RNAの調整法は「RNA抽出からPCRまでの流れを解説【RNA実験まとめ】」にまとめているので参考にしてください。

またPCRの原理を勉強・復習した人は「PCRの原理を図解付きでわかりやすく解説【初心者向け】」を読んでください。

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